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(R18) Lv.5 (HQ)

第3章  Lv.12



 ショーも終わりに近づいた頃。

 バーカンでクラッシュアイスを作っていた鉄朗さんのところに、ひとりの女性客が近づいてきた。

 美しく着飾った彼女の手には、小さな紙袋が握られている。

 見覚えのあるブランドロゴ。
 英国の伯爵夫人を印刷した、老舗チョコレート店の。私が食べさせてもらったのは彼女からの差入れだったらしい。


「……綺麗なひと」


 極々小さく、独りごちる。

「っけー! モテ男はいいよなあ!」
 いつのまにか正座することを諦めたらしい光太郎がそう言って、私は「……そうだね」とだけ。

 消えてしまいそうな声で答えて、自分勝手に、胸を痛めるんだ。どうしようもなく募る想い。



「いーの? たぶん、傷つくぞお前」



「え……?」と、聞き返そうとして。
 なのに上手く声が出てこない。

 唇で『え』のかたちを作ったまま、喉から漏れるのは掠れた息。瞳を左右に揺らして、それからようやく光太郎のことを見る。


「鉄朗くんはもう恋とか、そーゆーの、二度としねえと思うから」


 だから、やめとけ。

 私を真っすぐに見据える光太郎の声色は、とても、怖いくらいに穏やかなものだった。

 まただ、と思う。

 また、やめろと言われた。
 一静さんの言葉を思い出す。たった今聞いた光太郎の言葉がさらなる疑念を呼ぶ。


「どうして、そんなこと──……」


 問おうとした刹那だ。

 店内に響いた拍手がショーケースの終わりを意味し、私たちは、裏手へと戻ってくるダンサーたちに備えて退かざるを得なくなった。


「あっ、ちょ、愛莉助けて!」


 足が痺れて動けないと泣きつく光太郎に肩を貸して、その大きな身体を支えきれずに私まで一緒に転んで。

 結局、また、何も分からぬまま。
 私は、鉄朗さんのいるフロアへと戻ることになるのであった。

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