第3章 Lv.12
お気に入り、なのだろうか。
私は、彼の。
鉄朗さんの。
たしかにスカウトしてくれたのは彼だし、なんやかや言いながらも面倒を見てもらってる。
食事に、美容室。
新しい洋服や靴も、この街で生きていくために必要な物を用意してくれたのは彼だ。
だけどそれは、私を及川さんのお眼鏡に適う「立派なレディ」にするためで。
今日のショーケース。
観ていて、知った。
トップダンサーのサエコさんという人が怪我で休養していること。寿退社ならぬ寿引退するダンサーが今月だけで三人もいること。
そして、お店のオープン五周年を記念した新しいショーを準備していること。MCも兼ねているスガさんがそう言っていた。
私はそのための人員なのだ。
新しいショーの、足りないポジションを埋めるための。
私は、きっと、鉄朗さんにとって『舞台の一部』でしかないのだと思う。
ステージを構成する要素。
音楽に、照明に、ダンサー。
そのなかのひとつ。
ひとりの女性としてじゃない。
でも、それでも。
たとえ多数の内のひとつだったとしても、そのなかで、他より少しだけ彼に「お気に入り」と思ってもらえていたら、嬉しい。
そう、思うのだ。