第3章 Lv.12
「光太郎!店で盛んなって何度言やァ分かんだテメエ! 芋!お前もお前で簡単に絆されてんじゃねえビッチかコラ!」
「ハイスミマセンデシタ」
「……以後気をつけます」
休憩中の情事(未遂)を鉄朗さんに目撃された私たちは、フロアと楽屋を繋いでいる通路に正座させられていた。
すごく叱られているのだ。
もうめっちゃ叱られてる。
光太郎には罰として十連勤の刑が科せられたし、私には「家から一駅手前で降りて走って帰ってこい!」という刑罰が下された。
「ほーら光太郎、カメラに目線ちょうだい? 芋っ子も笑って、セイチーズ!」
「店長、それ俺にも送ってください」
「こっぴどく叱られたなー、お前ら」
足の痺れに耐えつつ、互いに科せられた罰を憂いつつ、なおも正座を続けるしかない私たち。
そんな私たちを喜々として撮影する及川さんと、演奏を終えて楽屋に戻るけーじくんとスガさん。
こちらには見向きもせず歩き去った黒いマスクの彼は、聖臣くんだろうか。
例の、スローテキーラの。
たしかベースを弾いていた。
「にしても、鉄朗も案外可愛いとこあるよね。あんなにムキになっちゃってサ」
「素直じゃないスからねあの人」
「ま、でも今回は、鉄朗のお気に入りに手出した光太郎が悪いべなー」
及川さんのスマホを覗きこみながら、あれこれと会話を交わす彼ら。
その様子を低いところから眺めていると、フロアと裏手を間仕切っている暗幕がふわり。
空調に、揺れて。
隙間から僅かに見える。ショットグラスにライムを飾りつける鉄朗さんの、仕事をしている姿。その横顔。