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(R18) Lv.5 (HQ)

第2章  Lv.7




「──木兎さん、聖臣が俺のスローテキーラまだかってキレてるんスけど」


 プツン、と切れる糸。

 高いようで、低いような。
 中性的な男性の声が聞こえた。抑揚のない淡白な語調。日本人らしい黒髪がよく似合う、涼やかな顔立ちだと思う。


「けーーじ! タイミング!」


 光太郎は大袈裟にリアクションをして、あちゃー!と目元に手を当てて天を仰いだ。

 ようやく解放される手首。
 皮膚が、ひりりと痛い。


「タイミングって、どうせまた女口説いてただけでしょう? ……ったく万年発情期の兎よりもタチが悪い」

「失礼か! 全然勃つわ!」

「そっちの勃じゃなくて質ですし、あんたの下半身事情なんか毛程も興味ないスよ気色悪い」

「気色悪い!? はい傷ついた!木兎さん傷つきました! 兎は傷つくと死んじゃうんだぞ!」

「寂しいと死ぬの間違いですよねそれ。もう、いいから早く作って下さいよ……聖臣(あいつ)本番前に酒入れないと調子でないんで」


 光太郎の喋りかたがマシンガンなら、こっちの彼はテンポの速いメトロノームだろうか。

 一定のリズムで毒を吐く。
 それも、寸分狂わずにだ。

 及川さんに負けず劣らずの毒舌っぷりである。ほぼ無表情だからすごく怖い。


「ほら! 持ってけ泥棒!」

「あ、俺にも一杯貰えませんかね」

「は!? やだよ面倒く「この子口説いてたこと鉄朗さんにバラしますよ」よっしゃ任せとけ今すぐ作りマス!」


 鉄朗さんの名前が出るや否や、顔を青くして敬礼した光太郎。

 そうだ、グラス磨き。
 大慌てでお酒を作りだした彼を見て、私も自分の仕事に戻ることにした。

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