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(R18) Lv.5 (HQ)

第2章  Lv.7



 メイクを担当するのは一静さんではないらしく、代わりにやってきたのはピンクベージュの髪が特徴的な男性だった。

 貴大さん、というらしい。
 ネームプレートの色が一静さんと違うのは役職の差なのだろう、たぶん。


「どしたの、これ、眉頭ないけど」


 消失した私の眉毛を見るなり含笑いでそう言って、やんわりとファンデを乗せてくれる彼。

 その手付きはとても優しく、繊細で、男性であることが不思議なくらい嫋やかに見えた。


「少しくすぐったいけど我慢な」


 そんな言葉と共にアイシャドウが乗せられ、アイラインを引いたら次はマスカラを。

 触れる筆先がどうしてもむず痒くて、ついつい瞬きをして「あ、こら、動くなって」なんて怒られる。

 穏やかに過ぎていく時間。
 一静さんから逃れられて正直ホッとしたけれど、結局、彼に植えつけられた疑念が晴れることは一向にないまま。


「よっしゃ、完成」


 メイクの仕上げにと塗られたのはヌーディカラーのルージュだった。薄く重ねられたグロスは、パール入りの。

「どう? 可愛くなったべ?」
 軽やかにそう問うた貴大さんが視界から消え、鏡に映しだされた自分を見て、思わず息を呑む。


「これが、……私」


 月並みだろうか。

 でも、本当にそう思ったのだ。

 手櫛を通しただけの髪。
 お世辞にも綺麗とは言えない顔。

 カフェの窓ガラスの中でぼやけていた田舎者の私は、そこにはもう居ない。


「んじゃお披露目といきますか」


 貴大さんの手がポンッ、と私の両肩に乗せられた。

 そのままカット椅子がくるりと半回転して、やおら立ち上がれば四方八方から「お疲れさまでした」の声。

 スタイリストさんたちに見送られて向かう先。待合スペースで読書に勤しむ彼まで、あと、三歩に迫ったときだった。

 鉄朗さんが、顔を上げたのだ。

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