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(R18) Lv.5 (HQ)

第2章  Lv.7



 遅めのブランチを終えて外に出ると、街の華やぎが本格的な賑やかさへと変貌を遂げていた。

 うねる大河のような人波の中を掻き分け、はぐれてしまわないようにと必死に彼を追う。

 やっとの思いで辿りついた駅。
 迷路よろしく張り巡らされた地下鉄に乗りこんで、吊革の上にある鉄棒を軽々と握ってしまう彼を見て、改めてその背の高さに驚くのだ。


「あの、鉄朗さん」


 私たちが身を置くお店の最寄駅に着いてすぐ。ホームから改札階へと続く階段を上りながら、控えめに問いかけた。

「あ? なんだよ」
 二段先を行く彼が歩みを止める。

 止めて、数秒。
 私が追いついたことを確認すると、今度は同じ歩調で足を踏み出してくれた。


「もうお店に向かうんですか? まだ、お昼過ぎですけど」

「あー、ちょっと寄るとこあんだよ」

「寄るところ? どこ?」

「着いてからのお楽しみにしとけ」


 緩やかなテンポで交わされる会話が心地良い。歩くペースに合わせて言葉を落とす、鉄朗さんの横顔。

 彼がさっき食べていたサンドウィッチは一体何ていう名前なのか、とか。サラダのオリーブを避けようとした私を叱りつける顔が相変わらず怖かった、とか。

 気付けば、彼のことばかり。

 考えていて。
 目で追っていて。



「おお、黒尾くんじゃん。こんな時間に来るなんて珍しいね」



 耳慣れない男性の声が聞こえたときにはもう、とある路面店のお洒落なドアを潜るところだった。

 独特の匂いがふわり香る。
 パーマ液と、脱色剤と。


「……ここ、って、」


 美容室──

 私がそう零すのと、鉄朗さんを出迎えた男性が「いらっしゃいませ、お嬢さん」と笑みを見せるのはほとんど同時だった。

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