• テキストサイズ

(R18) Lv.5 (HQ)

第2章  Lv.7



 注目を浴びるのも当然だ。

 あの高身長に、醤油顔ではあるけれど整った顔立ち。タイトなジーンズが際立たせるその脚の長さと、加えてこの美声なのだから。


(……鉄朗さんって、格好良いんだ)


 今更といえば今更だし、でもやっぱり改めて実感して、彼がイケメンなのだという事実から意識が逸らせなくなる。

「ねえ、あの人めっちゃかっこいい」
 カップルの彼女のほうが密やかに囁き、彼氏の青年が些か不服そうにだが頷いた。

「背でけえな、何センチあんだあれ」
 ぼそりと聞こえる羨望を孕んだ声。

 読書をしていたはずの女性は呆然と、まさに惚けたといった様子で鉄朗さんを見ている。

 こちらへ向かって歩いてくる彼の背中を追って、追って。行きついた先には、私がいて。

 ぶつかってしまう私たちの視線。
 私を注視する女性はしばらくこちらを見つめて、もう一度鉄朗さんの背中を見たあと、鼻先に笑みを浮かべてから手元の本に視線を戻した。

 心が、ザラザラするような。
 急に、自分の容姿が気になりだす。

 咄嗟に窓ガラスのほうを向いた。
 そこに薄っすらと映りこんだ自分を確認して、ひどく、ひどく落胆する。

 田舎から出てきたままの服装に、手櫛を通しただけの無造作な髪。顔はお世辞にも綺麗とは言えないし、スタイルだって、ほぼぺったんこだ。

 踊るために必要な筋肉があるだけ。
 美しさも、色気も、何にもない。

 及川さんに「まるでダメ!」と言われてしまったのも頷ける。

 情けないくらいに芋そのものなのだ。
 鉄朗さんとも、このカフェとも、不釣合い。あの女性はきっとそう思ったのだろう。

 ほら、また。
 心に、ザラザラした感情。

/ 41ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp