第2章 Lv.7
注目を浴びるのも当然だ。
あの高身長に、醤油顔ではあるけれど整った顔立ち。タイトなジーンズが際立たせるその脚の長さと、加えてこの美声なのだから。
(……鉄朗さんって、格好良いんだ)
今更といえば今更だし、でもやっぱり改めて実感して、彼がイケメンなのだという事実から意識が逸らせなくなる。
「ねえ、あの人めっちゃかっこいい」
カップルの彼女のほうが密やかに囁き、彼氏の青年が些か不服そうにだが頷いた。
「背でけえな、何センチあんだあれ」
ぼそりと聞こえる羨望を孕んだ声。
読書をしていたはずの女性は呆然と、まさに惚けたといった様子で鉄朗さんを見ている。
こちらへ向かって歩いてくる彼の背中を追って、追って。行きついた先には、私がいて。
ぶつかってしまう私たちの視線。
私を注視する女性はしばらくこちらを見つめて、もう一度鉄朗さんの背中を見たあと、鼻先に笑みを浮かべてから手元の本に視線を戻した。
心が、ザラザラするような。
急に、自分の容姿が気になりだす。
咄嗟に窓ガラスのほうを向いた。
そこに薄っすらと映りこんだ自分を確認して、ひどく、ひどく落胆する。
田舎から出てきたままの服装に、手櫛を通しただけの無造作な髪。顔はお世辞にも綺麗とは言えないし、スタイルだって、ほぼぺったんこだ。
踊るために必要な筋肉があるだけ。
美しさも、色気も、何にもない。
及川さんに「まるでダメ!」と言われてしまったのも頷ける。
情けないくらいに芋そのものなのだ。
鉄朗さんとも、このカフェとも、不釣合い。あの女性はきっとそう思ったのだろう。
ほら、また。
心に、ザラザラした感情。