第1章 Lv.5
ドンッ!と音がして星が舞う。
それは漫画的な表現のお星さまピヨピヨなのではなくて、実際の夜空だった。夜なのに明るい空。小さな星が点々と。
ありていに言えば、私は倒れたのだ。
「…………痛い」
仰向けにひっくり返ったまま、ぼやくようにして独りごちる。お腹が空いて元気がでない。立ちあがる気も起きない。
道行くギャルたちが私を見る。
まあ冷ややかな目で見てくる。
やめろ、そんな目で私を見るな。
写メを撮るな写メを。
やめなさい消しなさい。
そんなことを延々心中でごちていた。
声を出すことすらままならなかった。
思えばまともな食事も、睡眠も、もう随分長いこと摂ってない。そりゃ倒れもするか、と納得して目を閉じる。
意識が、徐々に遠くなって──
「……い、おいって、大丈夫か?」
突如、ペチペチと頬を叩かれた。
痛みのおかげで戻ってくる意識。
鼻腔をくすぐる香りは、香水だろうか。なんだかすごくいい匂いがする。
「こんなとこで寝てたら危ねえぞー」
それにこの声。
ものすごくイケメンな声。
人間が冷たいと噂の首都トーキョーでこうして私を救おうとしてくれているのだ。きっとどこぞのジェントルマンに違いない。
目を覚ませばそこには王子さまの微笑。そして、ラブストーリーは突然に。
そんな少女漫画的な展開を期待して、私は、ゆっくりと目を開けた。
「──え、顔怖っ」
「ド失礼かてめえ」
これがカレとワタシの出会いである。