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(R18) Lv.5 (HQ)

第2章  Lv.7



「っひゃい?!!」
 返事とも奇声ともつかない音が喉から飛びだして、直後、右眉付近でいやな音がした。

 恐る恐る鏡を見て、愕然とする。

 やってしまった。
 眉頭が、消えた。


「いつまで風呂入ってんだ!」


 消失した眉に落胆する暇もなく、湯けむりの向こうから怒声が浴びせられる。私が何かを言うよりも先に「とっとと出てこい!」のひと言が加えられた。

 バスルームに入ってから、まだ15分くらいしか経ってないのに。


「………せっかち尾鉄朗」

「聞こえてんぞテメエ!」

「っ!? 嘘ですごめんなさい!」


 地獄耳鉄朗さんに急かされること数分。どたばたとシャワーを終えた私は、前髪でどうにかこうにか眉毛を隠しつつリビングに戻った。

 すると、そこには出かける準備を整えた鉄朗さんの姿。

 普段はコンタクトなのだろうか。
 ついさっきまで掛けていた眼鏡は既に外されている。


「オラ、さっさと行くぞ鈍間芋」


 失礼千万でしかないあだ名を口にしながら、彼はさっさと部屋を出ていってしまった。

 玄関で靴を履くその背中に「どこ行くんです?」と問いかけると、なんとも無愛想な声が返される。


「飯」


 チャリンと鳴いたのはキーケース。
 彼によく似た、ブラックレザーの。

 ドアが押し開けられて、まだ少し濡れた髪にひやり、冷たい風。

 外の匂い。
 冬の匂い。

「お前、コーヒー好き?」
 ドアに鍵をかけながら問うた鉄朗さんを、まじまじと見つめる。

 見つめて、思った。


「好き、です、コンビニのとか」 

「じゃあエクセル行こうぜ。俺、あの店のラテ好きなんだよ」


 本当に同居なんだ。
 すごく今更だけど。

 本当に、一緒に住んでるんだ。

 このひとと。
 鉄朗さんと。

 これから毎日こうして一緒に出かけたり、ご飯食べたり、するのかな。するんだよねきっと。

 マンションのエントランスへ向かう階段。薄墨色のタイルを一段、また一段、彼を追って踏みしめる。


(……なんか変なの)


 くすぐったい、と思った。

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