第1章 Lv.5
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「だから! そんなことまでお前に指図される覚えはねえってんだよ! 居候なら居候らしく家主の言うこと聞け!」
「ですから! 私は居候として最低限のお願いをしてるんです! ダンサーは身体が資本なんですから、ベランダでの喫煙くらい協力してくださいよ!」
これである。
奇しくも私が身を置くこととなったダンスショークラブ【OLD-ONE】を後にして、わずか小一時間後のおはなしだ。
愛煙家の鉄朗さんと、嫌煙家の私。
両者まったく譲ろうとしない舌戦が続いていた。
「こたつがなきゃ生きていけねえこの時期にベランダって、お前鬼畜か!? そんなに副流煙が嫌ならお前が外出てりゃいいダロが!」
「いやです! だって寒い!」
私があまりにも迅速かつ声高にそう言ったものだから、鉄朗さんはゲーン!とショックを受けたらしかった。
「……こんのクソガキ」
そう小さく前置きをした彼の手が伸びてきて、ガッ!と私の頭を鷲掴む。
「その、寒いを、あろうことか俺に課そうとは、い い 度 胸 だ な コ ラ」
一文字喋るごとに頭をぐりぐりされて、それが摩擦で熱いやら痛いやら。
「バイオレンス反対!」
叫んでみても当然のように無視されるし、頭ぐりぐりは一向に止まないし。
「痛い!ハゲる! 私がハゲたりしたら鉄朗さんも困るんじゃないですか! 貴重な人材ですよ!」
「ナマ言ってんじゃねえぞ色気レベル5にも満たねえ芋女が。お前が禿げたらグラマーでパツパツな美人雇うだけだってんだよ禿げろそして泣け」
「なにもそこまで言わなくても!」