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【R18】君は華より美しい(仮題)

第10章 繰り返す逢瀬


 ファンドレイの昇格試験まであと一週間を切った頃。
 ディナントから友人を家に招待する、という話を聞かされたジョエルは、朝食を取った後刺繍に勤しんでいた。

(今日はファンドレイ様も予定があるとおっしゃっていたし…つまらないわ)

 借りた本も全然読む気にはなれない。
 元々、読む気はほとんどなかったものだけれど。
 ディナントの友人が来るというのであれば、一応挨拶をしなくてはならないが、それが面倒で仕方がない。
 自分の家に居るのに気が休まらない。
 挨拶だけしたら、さっさと部屋に篭ってしまおう。
 ジョエルはそう思いながら手を動かした。
 そろそろ昼食の時間だな…と肩を解しながら立ち上がったそのときだった。
 コンコンコン、とノックの音。

「ジョエル様。お客様がお見えです」
「あ…ええ、わかったわ」

 こんな時間に来るということは、ディナントは昼食に友人を招待したということ。
 同じテーブルに着かなくてはならないのか、とジョエルは一つため息をつく。
 姿見でさっと身だしなみを確認して、ジョエルは部屋を出た。
 億劫な気持ちを顔を出さないように、いつものように微笑みを顔に貼り付ける。
 そして、階段を降りて玄関へ行き――ディナントの客人に、目を丸くした。

「え……え…?」

 その人物も、驚いた顔でジョエルを見ている。

「……ここは…」
「ようこそ、我がスブレイズ家へ」

 にっこりと笑みを浮かべたのは、団服姿の弟。
 その隣で呆けているのはファンドレイ、だった。





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