第10章 繰り返す逢瀬
私、侍女のマールと申します。
最近、ジョエル様のご様子が変でございます。
以前から社交場へ行くのは気が進まないようでしたが、このところは特にそれが顕著です。
招待状を頂いたパーティーにはジョエル様かディナント様、どちらかが出席しなくてはならず、極力お二人で分担されていたのですが、夜警がないから、と全てディナント様にお任せになっております。
また、これまで一度も興味を示さなかった王宮の図書室へ通うようになりました。
何か予定がない限り、毎日です。
予定があって行けない日は随分沈んだお顔をなさいます。
どう考えても、これはアレです。
お相手はきっとあの方…ですね。
どんなお方なのか、とても気になります。
プレイラ様の幼馴染みとおっしゃっていましたので、悪い方ではないと思うのですが。
この目で確かめるまでは…ジョエル様には悪いですが、認めるわけにはいきません。
そんな折です。
ディナント様がそのお方を当家にご招待なさったのです。
旦那様も奥様も五日ほど領地視察でお屋敷を離れている隙を狙ったようでした。
その日、ジョエル様はいつも通り朝食を取られ、その後は刺繍をされておりました。