第9章 届いた手紙と蝶々結び
(つまり…次はもっと綺麗に結んでくれ、ということだよな…)
ファンドレイはしゃがんでブーツの結び目を解き、再度結んでみるが、やっぱり縦に曲がってしまう。
何かやり方がまずいらしい。
誰かに教えてもらう他ないだろう。
蝶々結びくらいなら聞いても怪しまれることはない、はずだ。
これは寮に戻ってからだな、とファンドレイは再び本を開いて続きを読んだ。
キスの仕方。
胸への愛撫。
脚やお尻の撫で方。
方法だけでなく女性の気持ちも中々細かく書かれていて、ファンドレイは驚いた。
(…"女性器への触れ方")
次の項目のタイトルに、ファンドレイはごくりと生唾を飲み込む。
周りには、誰もいない。
左右をチラリと見てから、もう一度視線を本に落とした。
ページをめくれば、簡単な挿絵が目に入る。
たった一度だけ見たあの記憶が頭の中に蘇る。
香水の甘ったるい匂いの中、白い脚を開いたあの娼婦の秘部。
ぴたりと閉じていた肉の割れ目をくちゅ、という音とともに指で開いて見せるその女の、顔が――。
「っ!!」
思い出せない娼婦の顔がジョエルの顔にすり替わりそうになってファンドレイはバタン、と慌てて本を閉じた。
(俺は一体何を考えてるんだ…!)
ファンドレイは頭を勢いよく左右に振った。
寮に戻ろう。
ジョエルからの手紙を再び懐のポケットにしまった。
とりあえずは蝶々結びだ。
さっきのことは一旦忘れよう。
ファンドレイはまた来たときのように周囲を威圧しながら図書室を後にした。