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【R18】君は華より美しい(仮題)

第9章 届いた手紙と蝶々結び


 ディナント以外に詳しいやつが思いつかない。
 でも…あの顔を前にして、聞けるのか?と思うと自信がない。
 これまではなんとも思わなかったのに、あの顔に見惚れてしまいそうなのだ。
 いや、ディナントの顔に見惚れるわけではない。
 その顔を通じて、ジョエルを思い出さない、なんて無理なのだ。
 彼女をこの腕の中に閉じ込めて、何度も口づけをしたのだから。
 思い出したら、体が熱くなる。
 向こうの思惑通りなのだとわかっていても、途中で止められたことによってどこにも発散できなかった熱は、散らしても散らしても戻ってきてしまう。

(くそっ…)

 彼女にとっては勿論、自分にとっても遊びのはずなのに。
 今度会ったら、一体どうなってしまうのか。
 
「はぁぁぁ…」

 盛大なため息が出る。
 興味がなかったはずなのに、気づけば彼女のことばかり。
 頭の中から追い出そうとして、結局意識してしまう。

(一回すれば落ち着く…よな…)

 経験はほとんどないに等しいが、きっと向こうが好きにするだろう。
 ……おそらくは。

(…また俺任せだったらどうする)

 初心な振りをしていたジョエルを思い出して、ファンドレイはさらに頭を抱える。
 こんなことならば、周りのやつらと同じように娼館に通えば良かったか。
 騎士団に入ってすぐ、一度だけ先輩に連れられて行ったきりだった。
 その娼婦は経験のない男に手解きをするのが好きらしく、随分丁寧にあれこれ教えてくれた。
 どんな顔だったかは全然覚えていないけれど、初めて知った感覚は刺激的過ぎた。
 二度三度と娼館へ行く同僚たちを横目に、ファンドレイはそれ以降一度も足を向けなかった。
 金で女を買うということが受け入れがたかったのかもしれない。

(どんな風にするんだったか…)

 そういえば、そういう類のマナー本があったような気がする。
 見渡す限り、自分以外に人はいない。

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