第8章 売られた喧嘩~ファンドレイ視点~
ファンドレイはむにゅむにゅと形や重さ、柔らかさを確かめるようにもみ続けた。
気持ち良いのか、ジョエルははふはふと息を乱している。
(…固くなってる…よな…?)
ぷくり、と勃ち上がった胸の頂が指にひっかかる。
ひっ、と声が漏れたので、ファンドレイはそこをスリスリと擦った。
もちろん、手の平は胸をもみ続けている。
「ふぅっ……や、やめて……」
ジョエルが首を左右に振ってファンドレイに懇願してくる。
けれど、それは彼の耳に入らない。
(…見たい)
コルセットのその下、胸の先端に直に触れたい。
彼女の言葉を無視してファンドレイは胸を被う布地をめくろうとした。
しかし、ジョエルがその手を掴んで止めた。
「ジョエル様…」
「お、お願い…おやめになって…」
自分から誘っておいて、それはないだろう。
彼女はペチコートを履いているので分らないのだろうが、今ファンドレイの団服の下は痛いくらいに張り詰めている。
ジョエルの首筋をチロリと舐めて、熱い吐息を漏らした。
「嫌でしたか…?」
「違うの…でも、これ以上は……あたくし…」
これ以上を望んで来たんじゃないのか?!とファンドレイの頭に血が上る。
「――ここではない場所で…」
ここはパルマンティエ公爵家の中庭で。
ガゼボで。
でも、そんなことはわかっていたくせに。
「……確かにここでは流石に憚られますね」
(完璧に遊ばれた――くそっ)
最後までデキるなんて、どうして思ってしまったのか。
自分だって、ちょっと引っかかった振りをしようと思っただけだったのに。
こんなに夢中になってしまった。
「貴女という人は――酷い女だ」
ファンドレイは小さく呟いた。
(ハッ…馬鹿か、俺は。そんなこと、分っていたのに)
自分の愚かさにファンドレイはフンと鼻を鳴らして。
そして小さく息を吐いた。