第8章 売られた喧嘩~ファンドレイ視点~
彼女の細い腰をぐっと引き寄せて抱きしめた。
黒い髪がファンドレイの頬をくすぐる。
「…っはぁ…はぁ…」
「…はっ…」
夢中でジョエルの唇を貪る。
甘くて、柔らかくて。
強い酒のようにクラクラするのが癖になる。
もっと、もっとと欲しくなる。
彼女の唇の端から蜜が零れるのをファンドレイの唇が追いかけた。
きゅっと縋りついて来るジョエルの首筋をつつ…と唇でなぞる。
「ひゃっ!」
左側の首筋をぞろりと舐めあげ、耳たぶをかぷりと甘噛みすれば、ジョエルが可愛らしい声を上げた。
「あ、や、ぁん…っ」
耳たぶの付け根をぴちゃぴちゃとわざと音を立てて舐めれば、堪らないとばかりに腰をくねらせてぷるぷると震える。
(もっと…触りたい…っ)
はぁはぁと荒い吐息を隠しもせず、ファンドレイはジョエルを後ろ抱きにして項に顔を埋めた。
もっと触れたい。
もっと声を上げさせたい。
もっと乱れる様が見たい。
首筋に舌を這わせ、鎖骨を左手の指でなぞる。
右手で、するりとジョエルのドレスの背の紐を解いて、肩から落とした。
「えっ……あっ…!」
サテンのつるりとした生地のコルセットが露になる。
ぎっちりと締め付けられているのを見てファンドレイは一瞬怯んだ。
しかし、コルセットの胸部分は柔らかい生地で出来ていることを思い出す。
(あの胸が…)
今この目の前、すぐそこにある。
ファンドレイはごくりと唾を飲み込んで手を伸ばした。
生地越しでもしっかりと存在感を放つふっくらとしたそれ。
「ファンドレイ様、そこは……ひゃ!……ふぁっ?!」
抗議の声を上げるジョエルを無視して、ファンドレイはちゅく、と耳の穴に舌を差し込んだ。
ジョエルがそこに意識を取られている隙に、ファンドレイは大きな胸を下から持ち上げるようにしてもみしだく。
(ああ…これが、女の胸…!)
肩越しに見える胸が、自分の手の平の中で形を変える。