第8章 売られた喧嘩~ファンドレイ視点~
「ん…」
ぴく、とジョエルの体が震えて鼻から息が漏れた。
足りない。
ただ唇を合わせるだけではなくて――。
(もっと、欲しい)
ファンドレイはそっと唇を離して、ジョエルを見る。
「あ……」
彼女の瞳は潤んでいるのだろうか。
月明かりではよく見えない。
けれど確実に、ジョエルは熱っぽくファンドレイを見上げていた。
ファンドレイはジョエルの頬に触れた。
そして親指で彼女の下唇をク、と押す。
それにつられてジョエルが口を少し開けたので、ファンドレイはその隙間にぬるりと舌を忍び込ませた。
「んっ…ふっ…」
ジョエルの狭い口内。
わずかにワインの味がする。
ジョエルは受身が好きなようで、ファンドレイにされるがままだ。
ちゅく、ちゅる、とジョエルの唾液を舐め取りながらキスを深くする。
「ん、んっ…っは、ふ…」
口の中を舐め尽す。
熱いジョエルの舌を持ち上げるようにして舌同士を擦り合わせる。
「んふぅ…はっ…ん…はぁ…」
苦しそうにファンドレイの腕をぎゅっとジョエルが掴むのに気づいて、また離れる。
ジョエルはぽーっとしている。
「舌を出して…」
掠れた声に従って、ジョエルはぺろりと舌を出す。
ファンドレイはすぐさまジョエルの舌をヌルリと舐め、先端をチロチロとくすぐった。
舌だけでなく、何度か唇もぺろっと舐めていたら、ジョエルが小さな舌をにゅくにゅくと動かし始めた。
「うっ…」
体が熱い。
下半身が熱を持ち始めたことに気づきながらも、ジョエルから離れることができない。
ジョエルがちゅっとファンドレイの下唇に吸い付いてきた。
「んっ…」
ファンドレイの唇からも吐息が漏れる。
ジョエルを離したくない。
激しく口づけながら、ファンドレイは彼女の指に自らの指を絡めて握り締める。