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【R18】君は華より美しい(仮題)

第8章 売られた喧嘩~ファンドレイ視点~


 もしかして、これは。

(あいつが言っていた…令嬢の"遊び"…?)

 やっぱり、ジョエル・スブレイズという人物もそういう女なのか。
 そして彼女は、その相手に自分を選んだとでもいうのか。

(――嘘、だろ?)

 どうして、自分なんかに。
 そう思っていると、ジョエルが上目遣いにこちらを見上げてくる。

「あの、ファンドレイ様」
「…私の名をご存知なのですか」

 ジョエルに見上げられて、名前を呼ばれて。
 ドキリとしない男がいたら、ここに連れてきて欲しい。
 彼女がキツイ香水の匂いを振りまいていたらきっと違っただろう。
 けれど、彼女からはほんのりと甘い香りがするだけ。

「ええ…先日は助けて頂いてありがとうございました。お礼を申し上げたいと思っておりましたの」

 ジョエルはそう言って媚を売るように笑顔を見せてくる。
 ファンドレイは渋面を隠すことも忘れて、彼女を見つめた。
 どっどっどっと心臓が高鳴っている。

「――あなたは」

 一体何を考えているんだ、と問い質したくなったが思いとどまった。
 あの男が言っていたじゃないか。

『駆け引きを楽しむのさ。騙そうが騙されようが、楽しければ構わない』

 面倒なことになるときもあるけれど、それは本人たちの失態だ。
 そうならないようにあれこれ考えるのも楽しいものだ、と。
 ジョエルもきっとそれだけだ。
 別に相手が誰でも構わないのだ。
 あのシドリアン・パルマンティエのパーティーで、その庭で、こうやって自分の気を引いて楽しんでいる。
 自分の美しさを十分理解し、利用しているだけなのだ。
 そこでようやく、ファンドレイはジョエルの腕をずっと掴んでいたことに気づいた。


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