• テキストサイズ

【R18】君は華より美しい(仮題)

第7章 スブレイズ家の人々


 背中にマラドスの声がかかるが、ジョエルは立ち止まらず、自室へ戻った。
 部屋まで追いかけてくるかと思ったが、マラドスは仕事のため定刻に屋敷を後にしたようであった。
(もう…いくらなんでも、酷いわ)

 何かと干渉してくる両親であったが、まさかこんなことになるとは。

(今度ファンドレイ様に会うときは、気をつけなくてはならないわね…)

 そう考えて、はた、と気づく。

(手紙を出さなくては――)

 次に会う約束などしていないのだ。
 便りは手紙だけ。
 しかし、手紙を出せば誰宛てか、などすぐにわかってしまう。

(どうしたらいいのかしら)

 ファンドレイはおそらく、中央に程近い騎士団の寮で生活しているはず。
 一番簡単なのは、ディナントに手紙を預けることだった。
 ディナントはスブレイズ家の長男だったがマラドスの意向で騎士団に入っている。

 騎士団に入るのは爵位のある家の息子ばかりだが、長男ではなく次男や三男など、家督を継がない…継げない者が多い。
 家督を継ぐ長男のスペアとして育てられ、長男が幼くして鬼籍に入らなければ騎士団行き…それが通例である。
 また、騎士団内部では爵位は関係なく実力が全て。
 第一部隊に入ることができれば、それは公爵位にも勝るとも劣らぬ名誉である。
 爵位の低い者でも入り婿として重宝されることもあって、特に子爵と男爵の家の者は皆第一部隊を目指している。
 そんな中で過ごした日々は、ただ公爵家の跡継ぎとして教育を受けさせるだけでは得難いものだとして、マラドスはディナントを入団させていた。

(ディナントが寮に戻るのは一週間後だったわね)

 王宮のある中央都を中心にして、公爵家や伯爵家の屋敷がある。
 その外側に子爵、男爵の順に屋敷が点在するので、騎士団のある中央都から遠い家の者は騎士団の寮に入る。
 中央に家が近い者は家から通うが、夜警の仕事もあるため
寮に滞在する期間もあるのだ。
 ちょうど一週間後、ディナントはその当番に当たる。

/ 158ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp