第7章 スブレイズ家の人々
(どうして家族の前でこんなこと言わなくてはならないの! 絶対にあたくしの家族は変だわ!!)
「姉さん、一体何してたのさ」
「意気地のない男は駄目よ?」
「ディナント! カトリアナ! お前たちなんてことを言うんだっ!!!」
純情一途、カトリアナしか知らないマラドスには、恋多き親子、カトリアナとディナントの考えが全く理解できなかった。
もちろん、ジョエルにも。
「――マール」
「はい、何でしょうか」
「とりあえず…あたくし…落ち着いて紅茶が飲みたいわ…」
「すぐにご用意致します」
朝から疲れてしまった、とジョエルは椅子にもたれ掛かる。
マラドスがまだ何か言っているけれど、ちょっと休憩だ。
マールに淹れて貰った紅茶を啜りながらジョエルはまた大きなため息をつくのだった。
「こほん。それで? お相手はどなたかな?」
がちゃがちゃした朝食がようやく終わったと思った頃。
わざとらしく咳払いをして、マラドスが努めて冷静に尋ねてきた。
「それは…」
「シドリアン様かしら」
「そうかなぁ。俺は違うと思うよ」
「……」
「でも、シドリアン様以外に良さそうな人いないじゃない?」
「それはお母様の好みであって、姉さんの好みじゃないから」
「そうだけど…」
「……」
「おっほん。カトリアナ、マラドス。ちょっと黙っていてくれないか」
「「はーい」」
「…ジョエル」
マラドスの視線が痛い。
ジョエルは悩んだ。
ここで彼の名前を言ってしまってもいいのか、と。
彼はきっと、自分とのことは秘密にしたいはずだ。
大体、ジョエル自身もまだ受け止め切れていない出来事で、いきなり家族の前で話すようなことでもない。
「……シドリアン様ではないわ」
それだけ言って、ジョエルは席を立つ。
「ジョエル」
「たとえお父様でも…これ以上、踏み込んで欲しくないの」
「ジョエル!」