第7章 スブレイズ家の人々
「いいわ、話してあげて」
「はい、奥様。社交場に出られるようになって以降毎回、お帰りになられた際にはジョエルお嬢様の装いが乱れていないかを確認し、奥様にご報告しております」
「えっ…」
ジョエルは絶句した。
ということは、つまり。
「ドレスの締め付け具合がお出かけになる際から緩かったのかと思ったのですが――」
「俺がね、結び方が変だよね?ってマールに言ったんだ」
「――はい。ですので、そのまま奥様にご報告いたしました」
「ま、その辺りに頭が回るような男だと、ちょっと心配だけど…下手くそってことは、その男は経験も少ないってことだろうから、姉さんが騙されてるって可能性は少なそうだよね」
あ、もしかして最後までヤっちゃったの?と、「朝食食べ終わった?」と聞くような塩梅で尋ねてくるディナント。
ジョエルの真っ青になった顔が今度は真っ赤になる。
「な、お、で、か…ど…」
「「ど?」」
パクパクと口を動かしているマラドスをディナントとカトリアナが不思議そうに見る。
「どっ、ど、どこのどいつだーーーーー?!!!!!」
「あ、その"ど"か」
「どういうことだ、かと思ったわ」
ガターン!と音を立てて立ち上がるマラドスを尻目に、ディナントとカトリアナが顔を見合わせた。
ジョエルはもうどんな顔をしたらいいのかわからない。
(あたくしが言いたいわ…! どういうことなの――?!)
「ジョエル! その男は一体誰だ?! お前はまだ嫁入り前なんだぞ! それを、それを…うおぉぉぉっ!!!」
髪の毛を振り乱してマラドスはジョエルに詰め寄った。
ジョエルも思わず立ち上がって言う。
「しっ失礼なこと言わないで! あたくしはまだっ」
「「まだ?」」
「ま、まだ――」
「「まだなの?」」
「まっ…まだよ…っ!!!」
母と弟が揃って言うので、ジョエルはきっぱりと親告した。