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【R18】君は華より美しい(仮題)

第5章 売られた喧嘩


「ご、ごめんなさい…あたくしとしたことが…先日からお恥ずかしいところばかりお見せしてしまって」

 穴があったら入りたいとはこのことか、とジョエルは思った。
 いつもならこんな失態など繰り返さないのに。
 はぁ、と大きなため息が聞こえてきて、ジョエルは肩を強張らせた。

(迷惑がられてるに違いないわ…)

「ジョエル様――お一人で、男のいるこの場所に来られるということがどういうことか…わかっていらっしゃいますね…?」

 ファンドレイが険しい目をしてそう言う。
 ジョエルはその意味がよくわからなかったが、わからない、と言って頭の悪い女だと思われたくはなかった。

「え…えぇ、もちろんですわ」
「私が、子爵の身分ということも…?」
「それも存知ております。オーランジ子爵家の次男だとお聞きしましたもの」

 一体何が言いたいのだろうか、と思いながらジョエルは答えた。
 それよりも、この体勢だ。
 結局、さっきまでとほとんど変わらず、ジョエルはファンドレイの膝の上に乗るような形になっていた。

「わかりました…では――あなたの、意のままに」

 ファンドレイはジョエルの左手を取り、手袋越しに口づけてきた。

「ふぁ、ファンドレイ様っ?!」

 驚いて声を上げると、彼はチラリとジョエルを見た。
 その視線にドキリとしたのも束の間。

「ジョエル様。ファンドレイ、とお呼びください」
「えっ…」

 告白もしていないのに、想いが通じたのだろうか。
 もちろん、彼は自分よりも身分が下なので、呼び捨てることもないわけではない。
 けれど、自分からそのように進言するということは、あなたを慕っていますよ、という意思表示なのだと――ジョエルは誰かがそんな話をしていたことを思い出す。
 そう、シドリアンはいつも呼び捨てて構わないと言ってくる。
 ジョエルは嬉しくなった。
 こんな急展開、絶対おかしいはずだと普段のジョエルであれば気づいたであろう。

「手袋を外しても…?」

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