第4章 知りたい
ジョエルは前のめりになって、プレイラに訴えた。
「結婚は、駄目だわ…!」
「だから――ジョエル、あなたが結婚相手になればいいのよ」
「あ、あたくしが…?! そんな、そんなことっ、無理よ、無理だわ…!」
一気に恥ずかしくなって、ジョエルは真っ赤に染め上げて顔を両手で覆った。
頭の中に、ジョエルの知る夫婦の姿――両親のことが思い浮かぶ。
仲睦まじい両親、母カトリアナと父マラドス。
マラドスの一目惚れから始まった二人の恋の炎は、恋人から夫婦になっても、そして親になっても消えていない。
毎朝、毎晩愛を囁きあうのが、夫婦というもの。
ジョエルはそう思っていた。
(そ、そんな、あたくしが…で、できないわ…!)
想像しようとするだけでジョエルの心臓は張り裂けそうだ。
そんな彼女をプレイラは面白そうに見ている。
(ああ、でもそれが夫婦と言うものなのよね…)
結婚なんて考えられないけれど、他の誰かとファンドレイが夫婦になるのも見たくない。
彼には、自分を見ていて欲しい――ジョエルは自分の心の底にそんな願望があることにようやく気づいた。
「実はね。ファンドレイはもうすぐ騎士団の第一部隊に昇格になるの」
「そうなの? 優秀でいらっしゃるのね…」
素敵、とジョエルが仄かに微笑む。
「ええ。そうなったら、子爵だから、と言って彼を避けていた令嬢達も動き出すわ。ゆっくりしていては絶対に駄目」
「えっ?!」
「第一部隊になれば、女性が寄ってくるのは当たり前でしょう?」
「そうだけど、でも…」
「心配しないで。ジョエルならきっと上手くいくわ!」
「プレイラ…! あたくし、まだ全然彼のことを知らないのよ…!」
だってまだ、彼の名前と年齢、騎士団であることくらいしかわからない。
そんな状態なのに、いきなり結婚が目標だなんてどう考えてもハードルが高すぎる。
ジョエルは目を白黒させてプレイラを見た。