第17章 恋は盲目
ほう、とため息をついて乙女のような表情をするマダム達にジョエルは愛想笑いするしかなかった。
「だからこそ、気になったのよ。貴女のお父様は公衆の面前で愛を誓い、カトリアナ様もその場で求婚を受けたわ。誰がどう見ても相思相愛で付け入る隙なんてなかった…けれど、貴女の場合は違って見えるようよ」
「……それは…どういう…」
「第一部隊に昇格した者から求婚をされて、それを受けるのが当然の流れだと思って婚約した…と」
ジョエルには意味がわからなかった。
どういうことだろうかと首を傾げる。
「ご両親はそれはそれは仲睦まじくていらっしゃったから……つまり、貴女と彼のお付き合いの様子ではそうでもないのかしら、と邪推する者がいるのよ」
「え?」
戸惑いの表情を見せるジョエルにプレイラは発言したくて堪らなくなる。
爵位が低く年若い者は自ら発言するのは基本的にタブーだが。
「まぁ…」
思わず声が出てしまった、という風に感嘆の声を上げた。
近場にいた公爵夫人がプレイラに視線を寄越す。
王妃の次に発言権のある人物だ。
プレイラはハッとして扇子を口元で隠した――。
「プレイラ嬢はパルマンティエ公爵のご長男とご婚約されたのでしたわね」
「はい。長らく片思いしておりましたので…とても嬉しく思っております」
公爵夫人の言葉に頬を染めてそう言って見せた瞬間、皆がプレイラに注目する。
シドリアンがジョエルにずっと懸想していたのは誰もが知っていること。
しかし、そのシドリアンにプレイラが想いを寄せていたなんて。
甘く切ない恋バナの予感に、永遠の乙女達が食いついた。
「なんてこと…貴女も中々お相手が決まらないと思っていたけれど、そういうことでしたのね」
「はい…。シドリアン様がジョエル様をお慕いしているのは十分分かっておりました。けれど、婚約者に決まったわけではありませんでしたので、諦められなくて…」