第17章 恋は盲目
「まぁぁ、そうね、諦められないわね」
「ええ…ジョエル様にお相手が見つからない限りシドリアン様が候補から外れるということは…」
「ございませんわね」
「あら? ということは、貴女のためにジョエルが婚約を決めたと?」
王妃の言葉にプレイラは首を振った。
「いいえ。私は、ジョエル様に頼まれてファンドレイ・オーランジ様をご紹介いたしました」
「頼まれて?」
「はい」
チラリ、とプレイラがジョエルを見る。
プレイラに話題が移ってホッとしていたところだったジョエルは慌ててこくりと頷いた。
「その……ひ、一目惚れ、致しました。それで、あの方はどなたかと思いましたところ…プレイラ様の幼馴染みと知ったのです」
「一目惚れ…?」
何とか言いきったと安堵の息をついた瞬間、今度は皆の視線がジョエルに突き刺さった。
いつもの微笑みの仮面が剥がれて、ジョエルは顔が真っ赤に熱を持っていくのを感じて焦って扇子を開く。
「あらあら」
「まぁまぁ…」
「お可愛らしい」
王妃とマダム達がおほほうふふと笑い合う。
「そう…貴女達の婚約がこんなに遅くなったのはそういうことだったの」
パチン、と扇子を閉じて王妃が心の底から楽しそうに笑った。
「色々と噂があったけれど、やはり事実は異なるものね。口さがない者の言うことは、信じるに値しないと…ふふ、真実の方が劇的で楽しいわ」
「ええ、そうですわね」
王妃と公爵夫人がサッと数人の令嬢に視線を滑らせた後、プレイラとジョエルへの質問攻めが始まった。
一体陰で何を言われていたのだろうか、と不安に思ったのも束の間。
ある意味拷問とも言える時間が続いたのであった。