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【R18】君は華より美しい(仮題)

第15章 華に焦がれる ~side ファンドレイ~


  全く会いに来ない自分に怒っていたのではないか、と自分に都合の良い解釈をしてしまう。
 そんな風に男に思わせる、あくどい女だとも頭でわかっていてももう遅い。
 いくら棘がある花だとしても一度極上の蜜の味を知ってしまったのだ。
 そこに裏があったとしても関係ない。
 ファンドレイは愛人ではなく夫になるのだから。

「本当は、すぐに会いに行くつもりだった」

 準備が色々あったのだと弁明すれば、腕の中でジョエルがほっと落ち着いたように体の力を抜いた。

「あたくしのため、でしたのね」

 嬉しい、と顔を綻ばせるジョエル。
 女性はダンスが好きなのよ、と母が言っていたのは間違いではないようだ
 けれど、だからといって何度もダンスをせがまれるのは困るので、ファンドレイは顔を顰めながら言った。

「ダンスは苦手だ」
「とてもお上手でしたわ」
「…なら、練習した甲斐があったな」
「ええ、もちろんですわ」
「……」
「……」

 不意に訪れた沈黙に、ファンドレイは意を決する。
 外堀は固めた。
 今更彼女が嫌がっても逃げられまい。
 ジョエルの手を取り、跪いた。
 絹のような肌をしたその手の甲に口づける。



「ジョエル・スブレイズ様。私、ファンドレイ・オーランジの妻になっていただけますか」


 ファンドレイはジョエルの青い瞳をじっと見つめて、その奥にある感情を読み取ろうとした。

「えぇ――もちろんですわ」

 ぱちぱちと長い睫毛を震わせるような瞬きの後に、ジョエルは花が綻ぶように笑み、こくりと頷いた。

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