第2章 男の子だもん
そんな女など中々いないとわかってはいるが、そう思わずにはいられない。
ほんの少し、心の隅っこの方でジョエルの姿がよぎったことに、ファンドレイは気づかない振りをした。
ファンドレイは騎士団の正装として羽織っていた上着を脱いで、バサバサと振り回す。
少しでも香水の匂いが取れれば、という悪あがきだった。
中庭を奥まで進めば、月明かりに照らされて噴水の水がきらきらと煌いていた。
(…綺麗だ)
ファンドレイは今日のパーティーがお開きになるまで、ここで時間を潰そうとすぐ近くに建てられたガゼボへ足を踏み入れた。
真っ白に塗られた木造のガゼボはその三分の一ほどが蔦で覆われていた。
(…誰か来るかもしれないな…)
ガゼボは愛を囁く場所だ。
ファンドレイは先客がいるということを知らしめるため、入り口に脱いでいた上着をひっかけた。
風が通って匂いが消えるので一石二鳥だ。
夜風が寒い季節でもないから、とファンドレイはベンチに寝そべって瞳を閉じた。