第2章 男の子だもん
(とても軽かったな…)
彼女を腕で支えたとき、その軽さにも驚いたこと覚えている。
あの後、プレイラに『ほらね!とっても魅力的だったでしょう? ジョエル様を受け止めるなんて、やるじゃない!』とバシバシ肩を叩かれた。
その後のことは、あんまり覚えていない。
ずっとぼーっとしていた気がする。
そんなことをぼんやり考えていたら、ファンドレイを取り巻いていた令嬢たちがクスクスと笑い出す。
「ファンドレイ様もジョエル様が気になりますか?」
「ジョエル様を狙っている方は大勢いらっしゃいますわ」
「あの美貌はもちろん、とてもお優しい方で」
「公爵の方々だけでなく、王家の方もジョエル様を妻に、と望まれているそうですわ」
いくら第一部隊への昇格が決まっていようとも、ファンドレイにあのジョエルが興味を持つはずがない。
自分たちで手を打ちなさい、とでも言いたいのだろう。
ファンドレイからしてみれば、対して興味がないことであった。
ジョエルという大輪の華にも、今目の前にいる彼女たちにも。
もちろん、ジョエルはとても魅力的ではあったが、それだけだった。
香水の匂いにもそろそろ限界だ。
人酔いならぬ、女酔いにファンドレイは頭痛を感じ始めた。
「――すまない…向こうに友人を見つけたので、失礼する」
「あ、ちょっと待って、ファンドレイ……!」
ファンドレイは一言断って、結局ホールを抜け出した。
彼を慌てて引き止めるプレイラや令嬢達の声など、聞こえなかったことにして。
中庭に出たファンドレイは、詰まった衿を緩めて深呼吸を繰り返した。
(よく皆平気でいられるな…)
もっと量を調整してくれないと、香水が臭過ぎて近寄ることも苦痛だ。
やはり女は苦手だ、と今夜のことで再確認できた。
どこかに、女らしくない女はいないのだろうか。
妻にするならば、そんな女がいい。
香水臭くない、声が甲高くない、むやみやたらに愛想を振りまかない。