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【R18】君は華より美しい(仮題)

第14章 華に焦がれる


「だ、大丈夫よ。問題ないわ」
「そうですか?」
「ええ。それと手袋は…」
「ございませんわ」
「そうなの?」
「ええ、今回は必要ないと奥様が」
「…わかったわ」

 いつもの袖の無いドレスではないからか。
 七分ほどの長さのレース袖でも、短い手袋が欲しかった。
 ジョエルは思わず唇を尖らせる。
 手の甲に直接挨拶のキスを受けるのは嫌だとあれだけ言ってあったのに。
 色んな意味で憂鬱な夜になりそうだ。








 憂鬱な夜になる。
 そう思っていたジョエルの目に、驚きの光景が飛び込んできた。

「スブレイズ公爵。今宵はご招待頂きありがとうございます」
「あぁ。長らく待たせて申し訳なかったな」
「いえ…お蔭様で今は――」
「ほぉ、そうか。それは良かった」

 マラドスと談笑しているのは、婚約者候補のシドリアン。
 そしてその隣でニコニコと微笑んでいるのは。

「プレイラ…?」

 シドリアンの手がプレイラの腰に回っている。
 これは一体どういうことなのだろうか。
 ビックリしてジョエルが固まっていると、不意にプレイラがこちらを振り向いた。
 パチり、と大袈裟なウインクが飛んでくる。

(まさか前からシドリアン様のことを…?!)

 なんということだろうか。
 親友の好きな人を、知らなかったとはいえずっと婚約者候補としてキープしてしまっていたなんて。
 ジョエルと同じく引く手あまたの彼女が中々結婚しない理由がこんなところにあっただなんて、知らなかった。
 彼女にはいつも助けられてばかりで、何一つ友達としてしてあげられたことなんてない上に、こんな形でずっと我慢させていたとは。
 申し訳無いという気持ちが胸いっぱいに広がって、ジョエルはただ立ち尽くすことしかできない。

 傍目から見れば、婚約者を友人に奪われて放心しているような様。
 そんな彼女に声をかけようと、爵位持ちの子息達が一歩ニ歩と足を踏みだしたときだった。

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