第9章 絡まる恋糸
お気に入りを見つけ、るんるん気分で18禁コーナーから出てくると、
「あべふっ!?」
さっきまでおそ松が脳内再生していた女の子が、目の前で洋画を選んでいた。思わず変な声が出ても仕方のない話だ。
奇声に驚き、陳列されたDVDからこちらへ視線を移すゆめ美。
「あれ?おそ松くん」
(やば…)
何の因果か、悪すぎるタイミングでおそ松はゆめ美と鉢合わせてしまった。咄嗟に後ろ手でAVを隠す。
「よ、よぅゆめ美ちゃん!ビックリしたよ〜!つっても嬉しい悲鳴ってヤツ?仕事休み?」
「うん、毎週月曜日は定休日なの。暇だから映画でも観ようかなって」
「へーっ、一緒に選んであげよっか?」
おそ松が出てきたのであろう、黒いカーテンを見てゆめ美はナニかを悟ったようだ。
「ううん、大丈夫だよ。観たいの借りられてたから出ようとしてたとこ。じゃあ」
くるりと背を向けたゆめ美の前におそ松は回り込む。
「ちょっとちょっと悪い冗談やめてー!せっかく会えたのにもうサヨナラとか、俺泣いちゃう!」
「で、でも」
何かを言いかけて押し黙るゆめ美。視線の先はおそ松がうっかりタイトル丸見えで手に持ったAVだ。
「あ、バレちゃった?」
へへっといつもの癖で鼻の下を擦り誤魔化すように笑うが、何も誤魔化せていない。
「…じゃあお店の外で待ってるから、早く借りてきて」
ぶっきらぼうに言い放ち、ゆめ美は少し早足で店の外へ出た。