第8章 トト子がいちばん!!
一松が店内に戻ると、セッティングは殆んど終わっていた。
店の入り口から見て、上手側に足場のみの簡易ステージが組まれ、魚のモチーフが施されたマイクスタンドが立っている。奥のカウンター席にはCDやグッズが並び、天井からはミラーボールが吊るされている。
感心し店内を見回していた一松のすぐ横では、サイリウムを挟んだ鉢巻に黒ぶちメガネ、ハッピにスーツという、相変わらずTHE・オタクな格好をしたチョロ松が真剣な面持ちで腕を組んでいた。
「チョロ松、サウンドチェック、フィニッシュだぜ」
汗を手ぬぐいで拭いながらカラ松が親指を立てた。
「はい御苦労様。照明は?」
「こっちもオッケー!」
トド松は、脚立の上で片手をヒラヒラと上げてウインクしている。
「ウッヒョッヒョッ!ミーもバッチグーザンス!今日こそはたんまり儲かるザンスー!」
「チョロ松くん、料理も仕込み完了だよ!」
「俺もステージ設営おしまーい。はー疲れた」
「いい感じだね。みんなお疲れ!」
チョロ松と向き合っているイヤミとゆめ美、おそ松の背中から、スマイル満開な十四松が顔を覗かせた。
「解体ショーの準備も終わっタイムリー!!」
「いや何それ?どっから持ってきたんだよ。今日マグロの解体ショーなんてやらないから」
「ボゥエッ!?」
何処から仕入れてきたのか謎なマグロが、寂しげに巨大まな板の上で寝転がっている。
「ぷっ、あははははっ!十四松くん斜め上すぎるよ!」
十四松の奇行に思わずゆめ美は吹き出した。
「そーすか?あっははー!」
「ったく、十四松兄さんは相変わらずぶっとるんでるんだから。ふふっ!」
ゆめ美につられ、トド松が、そして全員が笑い声に包まれる。