第8章 トト子がいちばん!!
——カランコロン、とドアが開く。
「そこのチミ、物販スペースはどこにすればいいザンス?」
ダミ声の主はイヤミだ。
「それじゃあカウンター席を使いましょう。一松くん、先に戻ってるね」
「あ…」
ドアが閉まり、一人取り残される。
(もうちょっと二人でいたかった…かも)
散々逃げたがってた癖に、独りになると途端に寂しさに襲われる一松。仲良くなりたいという本心を隠している分、寂しさは人一倍募るばかり。
早く仕事を済ませ、自分も店に戻ろうと早速作業に取り掛かる。
(ええと、あとはライトを付けて…と)
夜でも看板が見えるよう、クリップライトを看板の上に挟んでいると…
「にゃー」
「ん?」
橙色の毛並に青ぶちメガネをかけた一匹の猫が、一松に近づき足に頬ずりする。
「なに?遊びたいの?」
猫はにゃんと返事をし、店の路地裏手前まで歩いてから振り返った。
(かわいい…ナデナデしたいそして愛でたい…)
とは思ったものの、今は準備中。
「ごめん、今忙しい。また遊びに来るから。じゃあな」
そう告げて、一松もカランコロンとドアを鳴らした。
(あいつ、この店の裏に住み着いてたのか。今度沢山ごはん持って行ってやろう)
一松は、人知れず口元を緩ませた。