第8章 トト子がいちばん!!
チョロ松は席を立つと、ゆめ美の周りをゆっくり歩きながら熱弁を振るう。
「ゆめ美ちゃん…僕はね、さっき二人の美しい友情に感銘を受け、気づいたんだ。あんなに尊いモノを六人占めなんて勿体無さすぎる。そこで決心したよ。この僕が二人を立派なアイドルグループとして育て上げてみせる!!そして東京、いや、日本、ゆくゆくは世界に!一大センセーションをまき起こそうじゃないか!」
「ごめんなさい絶対無理です」
即答し、深々とマネージャーに頭を下げるゆめ美。
「えぇ!?なんで?もしかして遠慮してない?」
「だって、トト子を応援するので精一杯だもん」
と言いつつ、ゆめ美はただ目立つことを極力避けたいだけである。
「応援するのは俺らに任せてよ!二人仲良くミニスカート履いて歌ったらいーじゃん?」
にししと笑って勧めるおそ松の肩をカラ松がポンと叩いた。
「いい提案だが、無理強いはダメだぞおそ松。ゆめ美の代わりに、なんならオレがユニットを組んでやろうか?楽曲提供もでき」
カラ松の言葉を遮り、今度はトド松が押しの一手。
「じゃあじゃあ、アイドルにならなくていいから店の制服をアイドル風にしてみたら?」
「ううん、私はこれでいい、これがいいの」
そう言いながら、ゆめ美はカラ松ワッペンをそっと撫でた。
トド松は仰天して、目が飛び出しかける。
「ウソでしょ!?そんなクソが膝上からコンニチハしてるのがいいの!?言うなればそれ、お客さんにうんこ見せながら接客してるのとおんなじ…って、ボクってば汚い単語使っちゃってゴメーーン!」
「あ、あはは…ちょっと言い過ぎじゃないかな?」
いつの間にかゆめ美をアイドルに仕立て上げようと盛り上がる六つ子達。
放置されたトト子の心に吹雪が舞う。
「もうなによっ!!トト子が泣いて困ってんのにみんな放置して!!うえーーーんッ!!」
「あぁっ!すまないトト子ちゃん!ほら、泣かなぁ〜いでぶしっ!?」
余計なマイソングのせいでカラ松はみぞおちにスゴイのをくらった。
「おぉ…!なんて鮮やかなボディブロー…」
一松が嬉しそうに声を上げると、キッチンから店主が口髭を撫で、嬉々とした表情でやってきた。