第7章 あの約束、忘れちゃダメだよ?
話そうとは言ったものの、話題が思い浮かばず二人の間に沈黙が流れていたが…
「……チョロ松くんて、趣味とかあるの?」
いつまでも言葉が出てこないチョロ松を探るように、ゆめ美から話しかけた。
「し、しゅみ…!?えーっと、アニメとか好きかな!あとにゃーちゃんのおっかけ!」
「にゃーちゃんって、アイドルの?」
「え?あぁぁーーっ!!ちがっ、口が滑って!いや滑ったと言うか虚言というか!あ、あの…!」
読書と答えるつもりが、うっかりドルオタを暴露してしまった。
(最悪だ…!ぜっったいに引かれたぞこれ…!!)
恐る恐るゆめ美の顔を見ると…
「あの子かわいいもんねー!トト子のライブ行った時に実物見て驚いちゃった!人形みたいなんだもん」
「う、う…ん」
意外にも引いてる様子はない。むしろ会話を繋げてくれている。
「あれ?ゆめ美ちゃん、トト子ちゃんのライブ来てたっけ?」
「一度だけね。客席に魚をばら撒いてた日だったかな?トト子も売れっ子だよねー」
(売れっ子というか、あの日が一番集客出来たんだよな。魚目当てのお客さんがわんさか来てたから、全然気づかなかった…)
そこで、たまたまポケットに入れていたA5サイズのチラシがあったのを思い出し、ゆめ美に手渡す。
「あの、トト子ちゃんまた近々ライブやるからさ、よかったら観に行ってあげて」
「へぇ、この日は仕事だけど、ちょっと抜けられるか頼んでみようかな」
「じ、じゃあ、来るんだったら連絡して?僕、トト子ちゃんのマネージャーだからさ」
「そうだったの?すごーいチョロ松くん!」
「べつに…たた大したことじゃないよ」
(はあーーーーんっ!!すごいって言われたぁ!!)
失言したと思いきや、超絶可愛い幼馴染をダシに、見事出来る男アピールを成功させるチョロ松ジャーマネだった。