第7章 あの約束、忘れちゃダメだよ?
明かりを灯すファミレスの看板に向かい二人は踵を返す。
時計を見ようと、ゆめ美がスマホをチラ見すると…
「あれ?トッティからラインきてる」
「あいつから?つか連絡先交換してたの!?」
「うん。この間家を聞かれた時に」
「……へぇ」
(あのドライモンスターめ!また秘密裏に行動しやがって!)
チョロ松が胸中で毒づく横で、ゆめ美はラインにさっと目を通し、一人でこくこくと頷いている。
「チョロ松くん、やっぱり今日はやめよう?」
「ええっ!?どうして!?」
「トッティがチョロ松くんに用事あるみたいだから早く帰ってあげて。また今度ゆっくり話そう?」
(あいつ…用なんてないくせにっ!!)
チョロ松には、それがトド松の遠距離射撃だとすぐに分かった。二人で寄り道するのを、偽りの用事で阻止してきたのだ。
どこまでも腹黒い末弟に、殺意を抱く三男。
「い、いいよ無視して!用事なんか、どうせ夜中のトイレ付き添いくらいなんだから!」
「あはははっ!幼稚園児じゃないんだから!」
「冗談じゃなく本気であいつは怖がりなんだよ。ほんっと末っ子だからって、父さんも母さんも甘やかしすぎ!それなのに女子ウケは兄弟の中ではまぁまぁよくて、話しやすい雰囲気作ってすぐに初対面の人と打ち解けるし、この間なんか——」
トド松の横槍によほど頭がきたのか、チョロ松は遠くの敵に向かいネチネチと小言を並べ始める。というか、途中から何故か褒めているが本人に自覚は無い。
「あ、あの、分かったから落ち着いて?ねっ?また今度ゆっくりお茶しよ?」
「っ!!」
ぽんぽんと肩をつつかれ、チョロ松はようやく正気を取り戻した。
「ご、ごめんっ!僕…!」
(せっかくゆめ美ちゃんと二人きりなんだから、少しの間でも楽しまなきゃ!)
と、すぐに心を切り替える。
「……じゃあ、また、今度」
「うん。今日は話しながら帰ろ?」
「も、もちろんっ」
二人の歩くペースは、自然と落ちていった。