第7章 あの約束、忘れちゃダメだよ?
—紳士たるもの、女性を危険な目に遭わせぬよう真っ直ぐ家まで送り届けること—
チョロ松は緊張で思考がガチガチになりながらも、その教えだけは頭の片隅にあった。
何の教えかと言うと、兄弟にナイショでこっそりアマゾネスで注文した"最速で彼女を作り愛を育むモテる男のバイブル"である。
「ええと、次はどっち?」
(真っ直ぐ家まで送り届ける…か。まだ踏み込んだ関係になるのは早いよね。てか自分から行動おこすとか無理!あぁ、でももっと一緒にいたいなぁ。せっかく二人きりになれたのに、さっきからこ難しい話ばかりしちゃってムードゼロ!でも、もしかしたら…頭が良さげな意識高い系男子チョロ松くんって思われてるかも!グフフ…グフフフフ…)
「ここを右に曲がればアパートだけど…」
「わ、分かった!あの道をターンライトだね!」
「ふふっ!なにそれ!」
へんてこな英語に思わずゆめ美は吹き出した。
「なんかカラ松くんみたい」
「うわぁ最悪!ええと、あの道を右で承りました!」
「今度はなんで変な敬語!?」
童貞の権化であるチョロ松には、最速で彼女を作り愛を育むなんて芸当は無理な話だった。