第6章 一番強いのはぼくだよ!!
チョロ松の後全員パスをしたので、順番で一松スタートになった。
(もう終わりだ。大貧民確定…)
一松の手札はスペードの6、7。貧弱な数字だ。
トド松はあと一枚。次できっとあがるだろう。そう思った一松は、自信なさげにスペードの7を置いたが…。
「パス」
むくれ顔でパスするトド松。
「え?こんなクソカードなのに出さないの?」
「もうっ、いいから次いって!」
驚いているのは一松だけではない。
(トッティよ、ここであがらないとはどういうことだ!?つまりは3〜6を持っているんだな?しかし、オレはもう後がない!こいつに賭けるしか…!)
カラ松は、右手に選ばれしカードにそっと口づける。
「オレのターン。栄光の架橋ハートジャック!」
「えー何それ!腹いてぇ!」
お腹を抱えながら柿ピーをつまむおそ松を見て、厨二病を無自覚なカラ松はキョトンとする。
「おそ松何を笑っている?ここは正念場。勝利の道へのターニングポイントだぞ」
フ…と笑みをこぼしながら、カラ松は瞳に炎を宿し、一松へ視線を注いだ。
彼にとってこの遊びは、ゲームにあってゲームにあらず。恋慕を抱いたゆめ美と過ごす時間をかけたこの勝負、勝てぬのならば、ショックで三日は射精出来ぬほど落ち込み己を責めるであろう。そう、ちゃぶ台の上はまさに、死の淵に追いやられた戦場そのものなのだ。
「勝負だ!ブラザー!」
意気込んでハートのJを場に出すと…
「はいあがり」
「え…?」
一松はその上にペチッとスペードの6を出した。
イレブンバックのおかげで一松は平民になれたのだ。
カラ松の為に、カッコつけて字数を使った演出は、まるで意味を為さなかった。
一松に続きトド松もハートの3を出す。
「ボクもあーがりっ。ありがと、カラ松兄さん」
「ええっ!?マジかよっ!!」
こうして、あれだけ活躍の場を期待されていたスペードの3は、何一ついいとこを見せられず、第一回戦は終わりを告げた。