第5章 トランプやるけど、どうせ来ませんよね…?
二人きりで話すことと言えば、とりあえず恋バナだ。
「彼氏はー?」
「いないよ」
「そうなんだ?」
(ふふっ、分かってたけど会話のきっかけだよん)
女並に勘の鋭いトド松は、ゆめ美に彼氏がいないのなんてとうに見抜いていた。
会話の端々に男の影が全く見えないし、いかにも男から貰いました的な指輪やネックレスも着けていない。
だけど、さすがに過去は読めないでいた。
「前はいたの?」
ゆめ美は恥ずかしそうに首を横に振る。
「へぇ、ちょっと意外だな」
それはトド松の本心から出た言葉。
「そう?」
「うん。てっきり経験豊富なのかなーって思ってた」
「そんなことないよ。それを言ったらトド松くんの方が女の子慣れしてる感じする」
確かに、兄弟一女子慣れはしてるが彼は立派な新品である。
女子とお近づきになれたとしても、悲しいかな、ニートは所詮ニートなのであって、その先へ進むには高い壁が立ち塞がっているのだ。
就職してたり、高学歴だったり、車持ってたり…何か決め手になるステータスが無いと、手のひらを返し戦力外通告である。
友達止まりでご飯を奢って終わりなんてしょっちゅうだ。
「うーん、確かに女友達は多いけど…」
「あ、トド松くんもいないんだっけ?」
「今は募集中だよ」
「あははっ、私も募集中」
「それならさ…」
追い風になったのを感じ、トド松はここぞというタイミングで切り出した。
「今度一緒に出かけない?素敵なカフェとか知ってるからさ」
「いいね!みんなで出かけよう!」
「わーい!」とトド松が過剰に喜びかわいーく微笑みかければ、ゆめ美も嬉しそうにニコリと微笑み返す。
しかし数秒目が合うと、ゆめ美は恥ずかしそうに目を逸らし俯いた。
ゆめ美はこういう展開にあまり慣れていないのだ。
そんな可愛らしい反応をされて、トド松の心がときめかないはずがなかった。