第5章 トランプやるけど、どうせ来ませんよね…?
家まで行くつもりだったトド松だったが、待ち合わせ場所はアカツカ亭になった。
どうやらゆめ美は店主に呼ばれ、午前中少しだけ店の手伝いをしているらしい。
店の前、お気に入りのハットをかぶり直しドアに手をかけた時、ちょうどゆめ美が店から出てきた。
顔がぶつかりかけ、二人して目を丸くする。
「キャッ!!」
「ひゃっ!?」
互いに真っ赤になりながら急いで顔を離す。
「ごめん」とトド松から謝り、気を紛らわせる為に話題を変えようとした時、ゆめ美のワンピースが目に留まる。
「あの…ゆめ美ちゃん、そのベージュのワンピ可愛いね!胸元の刺繍がとってもステキだよ!」
「あ、ありがとう…!トッティの帽子もすごく似合ってる!」
「えへへっ、嬉しいなぁ!ゆめ美ちゃんに会うから気合い入れてきたんだ!じゃあ行こうか」
「うん」
笑顔の裏で、計算高いドライモンスターはあれやこれやと思考を張り巡らせる。
(今のはかなりポイント高かったな。あのまま事故チューしてたら言うこと無しだったんだけど。それはまぁいいとして、アカツカ亭から松野家までは徒歩十五分といったところ。二人きりで話せるのはごくわずか。この間に、クソ共より点数を稼ぎたい。少しでもゆめ美ちゃんとお近づきになりたい。ボクだけ他の五人とは格が違うのを、限られた時間内にアピールする絶好のチャンス!)
トド松の心は浮き立っているように見えて意外と冷静だった。
(へへっ、このビミョーな距離感で歩くボクらって、はたから見たら恋人同士に見えちゃうかも!初々しいカップルって感じー?)
いや、充分浮き立っていた。