第5章 トランプやるけど、どうせ来ませんよね…?
六つ子の目がギンギンに冴えている理由が分かったところで、話は冒頭に戻る。
いい子に眠れない長男は、布団でもぞもぞしながら騒ぎ始めた。
「あーもー切なーい!ゆめ美ちゃあん!俺のとっておきのチンコ受け取ってー!」
「うるっせぇなぁ!!とっておきのチンコって何!?どっちかっつーとバーゲンチンコだろ!!」
「やだこの人二回もチンコって言ったー」
「そんなに寝たいなら意識飛ぶまでぶん殴ってやろうか?」
本気でチョロ松が右隣のゲス松を殴ろうとした時、カラ松の声が遮った。
「ブラザー、眠れないなら子守唄を歌お」
「眠れないならさ、羊さん数えないっ?みんなで順番にっ」
トド松が絶妙なタイミングで子守唄を阻止する。
「何その羊"さん"って…。出たよ細部まであざとい。ひちゅじさんがいっぴきー♡」
「急におっぱじめないで一松。じゃあ次は布団順でカラ松兄さん」
まるで、子守唄のくだりがなかったかのように会話が展開するのはいつものことである。
頭がピースフルな次男は、さして気にする素振りも見せず羊を数えた。
「迷える子羊が……………二匹」
「イッタイなぁもう、羊さんが三匹ッ♪」
「雌が四匹」
「絶対ツッコまないからなバカ」
「羊が五匹!」
「あ、待って十四松、僕が先」
・・・
結局、彼らが全員寝付いたのは、羊が一万八千匹を超えたあたりだった。