第5章 トランプやるけど、どうせ来ませんよね…?
ふーふーと呼吸を荒げ自分から離れる一松を見て、ゆめ美の中で何かが頭に引っかかる。
「あれ、今、一松くんから…しっぽとみ」
「お願いします仕事が休みの日うちに遊びに来て欲しいですみんな会いたがってるからお願いします」
あんなに躊躇っていたのが嘘のように、スルスルと喉の奥につっかえていた言葉を吐き出す一松。
「えーっ嬉しい!月曜日が定休日だから、来週遊びに行くね!」
「……!!」
喜びを露わにしたゆめ美の声でハッと我に返る。
「誘ってくれてありがと!じゃあ買い出し頼まれてるから、待ち合わせとかはまた後で!」
ゆめ美は、手を可愛く顔の横で振りながらその場を後にした。
どうやら無事ミッションコンプリートしたようだ。
「……おれ、もしかして、言えた……?」
放心し、ドサリと膝をつくと…
「一松よ、よくがんばったな」
力強い腕が一松を抱きかかえた。
「クソ松、いつの間に…」
白い歯を輝かせ、親指を立てるカラ松。
「お前の勇姿、しかと見届けたぜ」
そんな兄を一松は…
「ふん」
「あぶしっ!?」
とりあえず三メートルほど吹っ飛ぶ勢いでぶん殴った。
——これが、三日前の出来事である。