第29章 ※トド松エンド 人を好きになるって
気づいてしまえば単純明快。
手に入れた喜びと罪悪感、相反する二つの感情がトド松の思考を揺さぶっている。
けれど誰も傷つけず自分だけおいしい思いをするなんてきっと不可能で。
(うわダッサ。迷ってるのはボク自身じゃん)
胸中でごちて、今更ながらに臆病な自分がなさけなくなった。
目の前の恋人へ視線をぶつける。
ゆめ美はそんなトド松の胸の内に気づくことなく、照れながらもふわりと微笑んだ。
(うん、このクソ可愛い彼女を前に、兄さんに一瞬でも遠慮したとかないない、ありえない♪)
トド松は悪戯に微笑み、ゆめ美の頬を手で包む。
「分かりやすいんだから。こんなに赤くして」
「か、顔近いっ」
照れる顔も柔らかなほっぺも、全部全部自分だけのもの。
何を今更戸惑っているのか。
「照れてるの?でもダメ。ちゃんと約束して。ボクだけが好きだって。兄さん達じゃなく、ボクだけだって」
ちゃんと言ってくれないと不安でどうにかなりそうだった。勿論そんなことトド松が教えるわけないが。
「ユメ。言ってよ」
逃がさない、とトド松の瞳が語りかける。
「…トッティだけ…っ、き」
「なに?そんな小さいと聞こえないよ」
二人きりになったトド松は男らしさとあざとさを兼ね備えゆめ美を翻弄する。
ゆめ美は、躊躇いながらも思いを吐き出した。