第29章 ※トド松エンド 人を好きになるって
「ありがとう」
そう言って、少し恥ずかしそうに笑うゆめ美が愛しくて。
トド松はたまらなくなって華奢な腰を引き寄せた。
身体を寄せ合えば互いの汗のにおいがほんのりとする。気恥ずかしさにゆめ美が視線を落とすと、トド松は気を利かせて明るい声で話しかけた。
「来年は一緒に花火見ようね」
「うん」
頷いてはいるがやはり恥ずかしそうなゆめ美。
この様子ならば、今夜このまま強引に最後までイケるのでは?——なんて頭をよぎったトド松だったが、その前にどうしても確かめたいことがあった。
「ねぇ、教えて」
「うん?」
「ユメにとって一松兄さんってなんなの?」
そんなこと曖昧にし、雰囲気にまかせてヤればいいのに——と、もう一人のトッティが語りかけてくる。そんなのはトド松だって分かっている。
けれどうやむやにしてはいけない気がしていたのだ。
心がないトド松の心を動かしたのは他でもない、一松の勇気あるケツだった。
「うーん……ほっとけない人、かな」
「どういうこと?」
「分からないけど、一松を見てると自分も似たようなとこあるなぁって思って、それで、励ましたくなったり、自分も頑張ろうって思ったり」
「あーもうっ!そうじゃなくて!」
肩を掴み真っ直ぐ見据える。
「好きかどうか聞いてるの!勿論恋愛感情ありきで!」
思いと言葉が溢れ出す。
「ボクだけを見てて欲しいからっ!」
目をしばたたかせるゆめ美の眼前には、頬を染め真剣な表情のトド松。
「……トッティだけを見てるよ」
「ボクも見てる……って、見てて欲しいってそのまんまの意味じゃないよ?この雰囲気で流石にそれは通用しないよ?」
ゆめ美は困ったように瞳を揺らし「そんなの分かってる」と返す。
分かりやすいゆめ美が、トド松に嘘や誤魔化しなんてありえない。
だけど、トド松の心はなんだか落ち着かない。
兄達から見事にゆめ美を奪取したのに、何故こうもモヤモヤするのだろうか。
「みんなのこと大好きだけど、れ、恋愛で意識してるのは、トッティだけ、だよ」
緊張を押し殺しゆめ美が口にしたその言葉に、トド松も自身の気持ちを見出した。
ああそっか——
ボクも、兄さん達のこと——