第29章 ※トド松エンド 人を好きになるって
「送ってくれてありがとう」
「当然でしょ?だってボク彼氏だもん」
場面は変わり、ゆめ美の自宅。
告白の結果は言うまでもなく今回の主役であるトド松だ。
無事ゆめ美のハートを射止めた末弟が家まで送り届けたのだ。
(兄さん達しつこかったな。帰ろうとするユメに何度もすがってきて。ヤツらを完全に諦めさせるには——)
「既成事実…」
思わず本音をポロリし、トド松が慌てて口をつぐむとゆめ美が聞き返す。
「ん?なぁに?」
「え?いや、き——奇声じじいが捕まったらしいよ?出っ歯でハゲで体臭ヤバいあいつ!赤塚区で!こわいよねぇ!」
「そうなんだ、聞いたことないけど」
「うん、ボクも」
「?」
ヘンテコな会話に疑問を抱きつつ、ゆめ美は繋がった手を解いた。そして嬉しそうにトド松に別れを告げる。
「じゃあまたね。今日は遅いから早く休んでね」
「ああ、うん」
ゆめ美は部屋へ上るため草履を脱ごうと屈んだ。
その後ろ姿をトド松はぼんやりと眺める。
うなじから目線はそのまま紺地に咲く鮮やかな牡丹へ。普段ならばすぐに気がつくのにと後悔。
その健気さに、今更ながらに理性が揺さぶられる。
「浴衣、とっても綺麗だよ」
その一言に、ゆめ美は嬉しそうにはにかんだ。