第29章 ※トド松エンド 人を好きになるって
トド松の言葉に、ゆめ美は瞬時に顔から湯気を立てた。と同時に、人心掌握術にまんまと嵌っていた四人の目が覚める。真っ先に術を解いたカラ松が二人の間に割って入った。
「いや待て!オレも好きだぁぁぁ!!」
「じゃあ俺俺俺も好きぃ!」
「ぼくもぼくもー!まずは手を繋ぐところからおねしゃす!」
咆哮が折り重なり、唐突に始まる告白合戦。
だが、兄弟一真面目を豪語するチョロ松がその使命を全うすべく正気に戻った。立ち上がり、兄弟を叱咤する。
「ゴルァァァ!!お前らなに便乗してんだ!」
津波のごとく打ち寄せる松達の防波堤になるチョロ松。兄弟の前に立ち塞がりゆめ美の方へ振り向いた。
「ごめんねゆめ美ちゃん、こいつら空気読めないってゆーか揃いも揃ってクズば………ゆめ美ちゃん!?」
ゆめ美は、子供のように顔を歪ませ泣きじゃくっていた。その瞳から、ポロポロと雫が溢れてはこぼれ落ちる。
「わだじも…ずぎぃ…!」
「誰が!?」
思わず聞き返すチョロ松。なお、便乗しなかった事によりチョロ松という選択肢は無かった。チョロ松は泣いた。心で泣いた。
「ユメ、泣くほど喜んでくれるなんて…。ボク頑張ってよかった。恥ずかしくてもちゃんと伝えて本当によかった」
「いやゆめ美はオレに返事したんだ。見ろあの目を。オレしか映っていない」
「はぁ?うっせぇよ童貞共!どう考えても一番エロい俺だろ!早く繋がりた〜いもう待ちきれな〜い!」
「手を繋ぐところからおねしゃす!」
四人は自信満々だった。各々が自分だと信じて疑わない。それだけ、ゆめ美との絆を感じているのかもしれないしただの馬鹿なのかもしれない。
トド松は愛らしく微笑みかけ、カラ松はウインクを飛ばし、おそ松はありあまる性欲をさらけ出し、十四松は手を差し出している。
一方のゆめ美はというと、感情のストッパーが壊れて歯止めがきかない様子。泣き腫らした瞳を手で覆いながらぺこりと頭を下げた。
「こんな…、こんな私でよければ付き合ってください…!」
「「「「はいよろこんで!」」」」
「だから相手は誰なのぉぉぉぉぉ!!」
チョロ松のツッコミは声がガラガラになるまで続いた。
・・・