第29章 ※トド松エンド 人を好きになるって
トド松の一言に、四人の動きがピタリと止まった。
(なに今の!?さりげなく俺達の牙を抜く的な!?)
(おおトッティよ、こんな時ですらオレのことを…!)
(騙されるなカラ松!あれはヤツの作戦だ。ヤツは何も失わず全てを手に入れるつもりなんだよ!)
トド松がずっと渡せずじまいだったネックレスは今、ゆめ美の胸元で咲き誇っている。思いを形に出来た喜びがトド松の心を熱くさせる。
「ありがとう、でも、私——」
「いいから貰ってよ。ボクの気持ち」
なおも嬉しさと申し訳なさが混ざった複雑な表情をしているゆめ美に、トド松は続けた。
「ボク、兄さん達のこと誰よりも大切に思ってるんだ。だから、そんな兄さん達を大切にしてくれるユメに心からのありがとうを伝えたくて」
そう言ってトド松は、発光するんじゃないかと思うくらい眩しい笑顔を見せた。
兄達はその場に立ち尽くす。
(えぇぇ…なんか一瞬で胸の奥あったまったよ!?アイツ邪魔する隙を一切与えないつもりかよ!)
(そんなにオレを好きだったのかブラザー!)
(マジかよトッティーー!!あ"ーー!!トッティーー!!あ"ーー!!死ぬーー!!)
(チョロ松兄さん黙ってようか!!)
錯乱するチョロ松に、流石の十四松もツッコまざるを得なかった。
ゆめ美は抑えきれない喜びを精一杯言葉にする。
「私こそみんなにありがとうだよ。みんなのおかげで毎日とっても楽しいもん。みんなに出会えて、本当によかった…!」
そう言いながら、嬉しさのあまり目に涙を浮かべる。
トド松はゆめ美にバレぬようチラと兄達の様子を探った。すっかり毒気を抜かれ佇む彼らを一瞥し、ゆめ美へと向き直る。
「ボクも出会えてよかった」
もう離れない。傷つけない。
「好きだよ。ユメ」