第28章 トド松ルート2 バカになるのが恋ザンス
「大丈夫ですか?」
「ぁ……ありがとうございま……!!」
ゆめ美の目に飛び込んできたのは、浴衣姿のトド松だった。
「あれ…ユメ?」
「…トッティも来てたんだ」
「……うん」
バツの悪そうに視線を外すトド松。すると、前方でジト目と純真無垢な瞳が自分を見ているのに気がついた。
会いたくない人達に会ってしまった——という本音をぐっと飲み込みよろけたゆめ美を支える。
「怪我はない?」
ゆめ美がコクリと頷いたのを確認し、トド松は手を離し踵を返した。
「じゃあ、ボク向こうに用事があるから」
「待って」
トド松の浴衣を細い指が捕まえる。
「あの…会えないかな?お祭り終わった後…」
「え?でもボク…」
「お願い。私、待ってるか「トッティービールまだー?」…!!」
聞き慣れない女の子の声にゆめ美の心臓がドクンと跳ね上がる。
「ちょっとトッティ何してんの?」
そんなことはつゆ知らず、トド松の後ろから可愛らしい女の子二人がゆめ美を覗き込んだ。
「その子誰?知り合い?」
「えっと、ボクの………友達のゆめ美ちゃん。ゆめ美ちゃん、この子はアイダでこっちはサッチン」
「は、はじめまして」
「こんばんは〜!一人なの?私達と一緒に花火見る?」
ハーフアップした巻き毛を揺らし、アイダが微笑みかける。
「いえ、私は…」
萎縮してモジモジするゆめ美だが、遠くで十四松が呼んでいるのに気づきパッと顔を上げた。
「すみません、一緒に来てる人がいるので……失礼します!」
ゆめ美は逃げるようにしてトド松達から離れ、手を振る十四松の元へと早足で戻って行く。
その姿をトド松がいつまでも目で追っていると、サチコがトド松の肩をチョンチョンつついた。
「早くビール買いに行こ?」
「う、うん、こっち混んでるから向こう側行こっか。あ、そういえばそのかんざし可愛いね!」
「あははっ!トッティってば調子いいんだからー」
トド松とゆめ美、歪な感情を抱いたまま、二人の距離が遠ざかっていった。
・・・