第28章 トド松ルート2 バカになるのが恋ザンス
「あ、そうだ」
少し歩いたところで、ゆめ美はキョロキョロと辺りを見回した。
「十四松くんのカキ氷買わないと」
「あとはゆめ美ちゃんのリンゴ飴!」
「一松も何かある?」
「……」
ゆめ美が話しかけても反応のない一松。心ここに在らずでじっと遠くの何かを見ている。
「一松?」
「……」
「いーちまーつくんっ」
「っ!」
ゆめ美がポンと軽く肩を叩くと、一松はビクリと肩を揺らした。
「ボーッとしてどうしたの?向こうに気になるお店あった?」
「い、いや…なんにもっ。こっちはまず……じゃなくて、お、おれはあれ食いたいっ!」
何故か慌てた様子で真反対を向く。
指差したのは…
「一松兄さん金魚食うの?生臭いよ!」
「…ちがう。その隣」
「隣は亀すくいだよ?」
「ちんみちんみー!」
「……やっぱ、なんもいらない」
「あっ、もしかして隣の隣のばくだん焼き?」
「…じゃあそれでいいから、はやく!」
一松は猫背のままスタスタと早足でばくだん焼き屋台へと向かう。
「待って一松」
十四松とゆめ美もついて行くが、ゆめ美は履きなれない下駄で石ころを踏んでしまい、バランスを崩しよろけてしまった。
「わ」
下駄がかたっほ脱げて転びかけると、不意にゆめ美の腕を誰かが引っ張った。