第28章 トド松ルート2 バカになるのが恋ザンス
花火大会、当日。
「よし、出来た!」
ゆめ美は鏡に写る自分と対峙していた。
思ったよりも短時間で着替えが済んでホッと一息。夜更かしして着付けの動画を漁ったかいがあった。
浴衣姿なのはおそ松におねだりされたから——というのもあるが、浴衣を見せたい人がいるから。
ゆめ美の全身を彩るのは、紺地に咲き乱れるピンクの牡丹。一目惚れして選んだお気に入りの柄。
鮮やかなピンクを身に纏えば、鼓動が跳ねて身体が燃えるよう。
ゆめ美は今日、ある決心をしていた。
(お祭りの後、トッティに一昨日のこと謝って、それから——)
その先を考えただけでゆめ美の頬は薄紅に染まる。
心にトド松を思い描きながら、メイクを済ませ髪をアップにしていると、待ち合わせの時刻を告げるピンポンが鳴った。
「ゆめ美ちゃーーん!十四松でーす!」
「はーい今行くー!」
準備を終えて玄関のドアを開く。