第28章 トド松ルート2 バカになるのが恋ザンス
トド松が家に帰ると、布団の上で兄達は思い思いの時間を過ごしていた。読書したり、猫のように丸まってたり、野球のグローブとバットを抱きしめていたり…。
「ただいまー」
そんな兄達を横目に、パジャマに腕を通す。
「おかえりぃ!聞いてよトドまつぅ!明後日の花火大会さぁ!」
長男は嬉々とした表情で、パジャマのボタンをとめている弟の肩を抱いた。
「誘ったらOKだって!ゆめ美ちゃん!イエーーイ!」
「ふーん、そ」
「あれ?なにその無関心な感じ?」
おそ松は、予想に反したトド松の反応に拍子抜けだ。
「兄さん達で楽しんできなよ」
「んー?どうしたブラザー?」
サングラスを磨いていた手を止め、カラ松。
「ここは兄弟全員でゆめ美との花火大会に歓喜する場面だぞ?遠慮するな」
「ボクは一緒に行かない。友達と約束しちゃったから」
「えっ?なんで?」
チョロ松が尋ねると、みんなの視線がトド松に集中する。
「なんでって、誘ったから」
「いや急におかしくない?お前、昼間あんなにゆめ美ちゃんと行きたがってたのに」
「はぁーあ、急に冷めるとか、相変わらず心がないねぇ」
ため息と共に、おそ松の腕がトド松の肩から離れていく。
「じゃあトッティの友達も一緒に行こーよー!」
「十四松。それは話ややこしくなるからダメ」
布団の中からくぐもった声。声の主は一松だ。
布団で丸まっていた一松だったが、閉じていた目を眠たげに開き起き上がった。
「あのさ、ほんとにおれらと行かないの?」
「うん」
「絶対に?」
「絶対に」
「へぇ……じゃ、おれらはおれらで楽しむから」
「…うん」
静まり返る部屋。
言葉にはしなくても、兄達全員トド松の態度に違和感を感じていた。
そんな空気を打ち消すようなワザとらしい明るい声が部屋に響く。
「ほら、もう寝よう?十四松兄さんラジオ体操起きられないよ」
「あーそーだったー!寝っぺ寝っぺ!」
十四松がパチリと電気を消したのを合図に、みんな布団に横になった。
(…なに考えてんだよ。バーカ)
胸中で毒づき、一松はそっと目を閉じた。
・・・